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米国のオーディオ専門誌「The Absolute Sound」の2025年1月号にAP-01が掲載されました / The AP-01 was featured in the January 2025 issue of audio magazine The Absolute Sound.

米国のオーディオ専門誌「The Absolute Sound」の2025年1月号にAP-01が掲載されました。
音楽ジャーナリストのマイケル・フレマー氏に高く評価いただきましたことを、大変光栄に思います。

これからも真摯にレコードプレーヤーと向き合い、さらなる製品の開発に努めてまいります。今後ともご期待ください。下部に要約をご用意しました。是非お読みください。

The Absolute Sound (TAS)
1973年創刊の世界的に有名なオーディオ専門誌。オーディオ機器のレビュー、音楽ソフトの紹介、業界ニュースなど、幅広い情報を提供し、オーディオ愛好家や専門家から高く評価されている。信頼できるガイドとして、多くの読者に支持されている。

著者 Michael Fremer
ハイエンドオーディオ業界で広く知られる音楽ジャーナリスト。これまでにStereophileやSound & Visionなどの様々な出版物に寄稿し、オーディオファイルコミュニティに大きな影響を与えた。アナログオーディオ機器とレコードの熱心な支持者としても知られている。
現在、Fremer氏はThe Tracking Angleの編集者、The Absolute Soundのシニアエディターを務め、世界中のオーディオファイルに影響力のある人物として知られている。

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Rules Are For Fules!
ルールは愚か者のためにある!

もしスタンリー・キューブリックに選ぶことが出来たなら、『時計じかけのオレンジ』に登場する華やかな Transcriptorsのターンテーブルよりも、このターンテーブルを選んだかもしれない。数年前、ハイエンドミュンヘンでユニークな外観をしたターンテーブル、AP-0(現在は完売)を初めて見たとき、私はそう思った。

後継機であるAP-01の外観はプラッターとトーンアームがあること以外は他のどのターンテーブルとも異なっている。そのデザインの背後にある考え方も同様に独創的だ。その外観は言葉で説明するまでもなく、画像をご覧いただければ十分だろう。

医療、航空、時計業界などに向けて高精度部品を製造する日本のメーカー、由紀精密はこう自問した。「私たちの技術を結集して、人々の心を豊かにする製品を作れないだろうか」。この考えを目標とし、伝統的なオーディオ製造の慣習には耳を傾けることなく、枠にとらわれない物作りを目指し、「ハイエンドブランドと認識されるためには一定の(高価な)価格の製品でスタートする必要がある」と、この会社のある人物が加工技術を活用し製造することにゴーサインを出した。

その人物とはまだ40代の由紀精密の社長、永松純である。社長就任以前は開発部長、技術開発事業部長を歴任し、趣味はもちろんオーディオとクラシック音楽。この明らかにユニークなターンテーブルのデザインを生み出したのも彼である。OMA(Oswalds Mill Audio)が発見したように、独自性は必ずしも商業的成功への道筋になるとは限らない。Jacob Heil­brunnがレビューしたK3は最も独創的な外観を持つターンテーブルの1つであり、その形状は派手さではなく機能の結果である。私はK3を「建設クレーンを載せたグッゲンハイム美術館」のようだと外観を賞賛したが、同社のオーナー/創設者は私のそのレビュー(他メディアで公開)に腹を立てた。K3がどれだけ売れたか、または売れなかったか知らないが、その理由は高額な費用でも、世界最高の音と性能を持つターンテーブルでは無いからでもない。その外観が金銭的余裕のあるレコード愛好家をも遠ざけたのだ。

AP-01のデザインに対する読者の反応は私には予測できない。しかし、市場の声に押され、由紀精密にとって初めてのターンテーブルであるAP-0は完売した。AP-01はその後継機である。電気系統を変更し、当初の設計で気がかりだった静電気対策も施したという。また、部品の60%を改良している。

2年前のハイエンドミュンヘンで純(永松)氏と話をしたことがあるが、このプロジェクトで最も興味深いことは、同社が初めて自ら考案し開発したコンシューマー向け製品だということだ。同社のビジネスは常に、他社のプロジェクトのために指定された部品やコンポーネントを注文通りに生産することであった。このプロジェクトの当初の目的は、同社の能力をアピールし、「チーム・スピリット」を構築できるような有用な製品を設計・製造することだったが、ターンテーブルのアイデアが浮上するまでその熱は冷めていた。レコードやターンテーブルには、それらを知らないデジタル愛好家たちを狂わせる魔力があるようだ。それが魔法の一部なのかもしれない!

プロジェクトの開発は、当時のCEOであった大坪正人氏に内緒で、若い 「CD世代 」のエンジニア・チームと一緒に始まった。彼らは純の自宅でレコードの音の素晴らしさに触れるまでターンテーブル・プロジェクトを 「理解 」していなかった。AP-01で数ヶ月を過ごした今、私はその外観と音響性能の両方に対する市場の評価に同意する。しかし、9インチで「アンダーハング」(マイナス15mm)、さらにオフセットなしのトーンアームは既知の幾何学的ルールをことごとく破っているので、まずそれを明確にしておく。

A Call to Arms
アームへの提言

ピボット式トーンアームにおけるLTE(横方向のトラッキングエラー)を最小化する最善策はほぼ100年前に「定説」となった。ラッカー盤に音溝を刻むカッターヘッドはラッカー盤を半径方向に移動する一方で、アームは円弧を描くため、針がレコード面を移動する際に生まれる偏差を解決しなければならない。

この問題に取り組んだ数学者は、LTEを最小化するには針が描く円弧が、ピボットからスピンドルまでの距離(アームの長さ)を決められた長さ分「オーバーハング」させる必要があるとした。この長さ(ピボットからスピンドルまでの距離に「オーバーハング」を加えた長さ)がアームの有効長である。アームが長ければ長いほどLTEは小さくなるが、アームが長いと別の問題が生じる。どのオーディオでもそうであるように(そして、人生の大半と同様に)、飲む毒は自ら選ぶものである。

幾何学的な研究を行った数学者(1938年のLöfgrenと1941年のBaerwald)に加え、Percy Wilsonというイギリスのオーディオ科学者/ジャーナリストが、ヘッドシェルのオフセット角、またはアームを「S」字型に曲げて作るというアイデアを考案したと言われている。どちらのアームタイプも今日まで様々な長さで生み出され、針を溝の接線に近づけることに一役買っている。

BaerwaldとLöfgrenのどちらの説でもLTEがゼロとなる「null」ポイントが2つ、レコード面に生じる(ポイント位置は異なる)。それらのポイントがどこに位置するか、もしくはレコード面にどれだけLTEが存在するかは幾何学で明らかにすることができる(他にはStevenson、さらに最近ではUNI-DINがクラシック音楽や、ラベルに近い位置でのカット(古いレコードのような)を施さないレコードに対して、有用な2つの代替案を提供している)。

では、なぜAP-01の設計者は「アンダーハング」でオフセット角のないトーンアームを選んだのだろうか。ピボット式トーンアームに働くもうひとつの力が「スケーティング 」である。これはアームがレコードの中心に向かって移動する際に内側に滑る力であり、アームが長ければ長いほどオーバーハングが少なくて済むため、アームのスケーティングは少なくなる。そう、単純に言えば「オーバーハングがスケーティングを引き起こす」のである。

AP-01に実装された各種のメカニズムは完璧ではないかもしれないが、スケーティングに対し効果的に補正する反力を生み出している。この反力が無いと針はレコードの溝の壁に乗ることとなり、レコードにも針にも音にも良くない。

日本を中心に広がる設計思想として、オーバーハングとオフセットはLTEを低下させるが、スケーティングがもたらす音への悪影響はLTEがもたらす影響よりも不快であり、スケーティング、特にトラッキングと音に対して重要なサスペンションに悪影響を与えるほど激しいスケーティング・サイドフォースをなくすことでより心地よい音を生み出せるという主張がある。しかし、AP-01のアンダーハングのゼロオフセットアームは、微小ではあるがスケーティングしている。AP-01のアームを溝の無いレコードの外周に置くとアームは内側に向かって滑り始め、レコードの中心付近で止まる。一方、ラベルの近くにアームを置くと、アームは外側に向かって滑り、外周付近で停止する。これらの動きは通常のスケーティングに比べるとゆったりとしており、これがアンダーハングアームを提唱するポイントである。AP-01のアームはストレスや横方向への力をかなり軽減することができている。

End of Lecture
講義終了

幾何学はさておき、航空宇宙や医療分野で実績のある企業であるが故にAP-01のアームは精密に作られているように見えるが、異国情緒漂う材料で加工されたチューブや、エラストマーで絶縁されたカウンターウェイト、明らかなアンチスケーティング機構などは無く、「ベーシック」にも見える。方位角はヘッドシェルで調整可能で、オフセットがないため針のすくい角に影響しない(良いことだ)。アームにはマグネットの力を利用した非接触ブレーキが組み込まれおり、これは工業製品に使われているヒステリシスブレーキを応用したものと同社のWebサイトに記載されている。この技術がトーンアームに応用されたのは初めてである。アームの高さは10mmの調整幅がありVTA/SRAに対応でき、アームそのものもしっかりとした感触で、セットアップも使い勝手も良い。

同社はメインアームを自分で選んだアームに変更したい人に向けてアームレスのAP-01EMをハイエンドミュンヘン2024で発表している。なお、AP-01、AP-01EMともにセカンドアームの取り付けが可能だ。

ターンテーブルは糸ドライブ式で、スプリングでテンション管理された2つのプーリーとケブラー繊維の糸、DCコアレスブラシレスモーター(エンコーダフィードバック)が使われ、12インチ、高さ3/4インチ、適度な重さ(ほぼ9ポンド)のアルミ製プラッターを33.33、45、78rpmで回転させる。プーリーは溝付きの金属製シリンダーである。

プラッターもアームと同様に異国情緒のある素材やサンドイッチ構造、真鍮シリンダーの埋め込み、エラストーマーダンピングなどを使用していない。しかし、プラッターは独自の製造工程を経て作られている。「何の工夫もないアルミ製プラッターに見えますが、その製造工程には面白い特徴があります。この削り出しプラッターは、当初は板材を輪切りにして製造されていました。しかし、板は横方向に押し出して製造されるためにアルミの組織が横方向に伸びてしまう。それを丸くカットするということは、プラッター内のアルミ繊維も横方向に走ったままとなります。AP-01の開発ではより正しい状態を追求したかったので大きな丸太のように押し出されたアルミ材を用意し、それを輪切りにして使用しています。こうすることで、繊維方向は回転に対して縦方向となります。このような工夫は由紀精密が素材加工を得意とする会社だからできることです。」と説明されている。

オプションとして、レコードの外周の反りを抑え、プラッターの有効質量を増やして慣性駆動を向上させるために見事に加工された外周スタビライザーを取り付けることもできる(「見事に」というのは、他の多くの製品とは異なり、正確にフィットして中心に押し付ける必要がないからだ)。プラッターは静電気を抑える導電性で、ターンテーブルシート無しで使えるように設計されている。また、比較的質量の大きいセンタースタビライザーも供給されている。

プラッターを支えるマグネットベアリングは永久磁石の磁気反発を利用したラジアル非接触タイプで、スピンドル先端の球のみが外部と接触し、ベアリングの周囲には一定の間隔が確保されるためベアリングノイズのない静かで持続的な回転運動を可能にしている。ベースからプラッターまで続く長いシリンダーは、ブッシュ内のスピンドルだけでなくそれ自体が回転する。この構造は機械的にも見た目にもユニークだ。同社の文献のどこかに「自立回転するコマ」のようだとも書かれていた。そして実際にプラッターを横方向に押してみると、プラッターに多少の「たわみ」が生じる。(この点を強調するため、ハイエンドミュンヘン2022で同社は精密加工されたコマを配布した)。そう、AP-01は見た目もデザインもユニークなのだ。そして、このターンテーブルの振動(打検)に対する絶縁レベルは、私が遭遇した中で最高レベルであったことも指摘しておこう。上部プレートを叩いてもスピーカーからは高周波ノイズがわずかに発生しただけで、それもすぐに消えた。AP-01について私が何を書いても、その精巧な機械加工と、優れた「組み立て技術と仕上がり」(大胆なデザイン以上にミュンヘンの群衆を引き付けた視覚的特徴の1つ)を十分に伝えることはできない。

Setup And Use
セットアップと使用方法

セットアップは素早く、比較的簡単だ。AP-01は基本的に組み立て済みで、プラッターをスピンドルにセットすればすぐに使える。コントロールボックスの左側には電源ジャックとオン/オフスイッチがあり、RCAジャックとアース端子は右後ろの柱に内蔵されている。脚を水平にし、ケブラー糸をプラッターとプーリーにかけ、カートリッジを装着すれば準備完了となる。

コントロール・パネル上部のロータリースイッチでプラッターを回転させ、隣のレバーで33 1/3、45、78rpmを選択する。各回転数に応じたピッチコントローラーでピッチを調整できるが、設定後に誤って触れてしまうと再設定にはストロボ・ディスクが必要になるので注意が必要だ。AP-02にはロック機能があればいいのだが!

スピードと言えば、ケブラー糸の結び目はスピードコントロールの妨げになるように思えるが、実際はそうではない。少なくとも、AP-01のようにスプリングでテンション管理されたダブルプーリー設計は、驚くほど強力なトルクを発生する。W&F RMS 0.02/ジッター0.094%など、シェイク&スピンの結果は極めて良好だった。

価格は外周スタビライザー、センタースタビライザー、カウンターウェイト、重量カートリッジ用カウンターウェイト込みで、AP-01EMは$44,975、AP-01は$49,975だ。(※由紀精密追記:2024年12月現在の米国価格です)

Max SLP (Surprising Listening Pleasure)
最上のSLP(驚きの聴き心地)

AP-01の比較的質量の低いアームは追従性の高いカートリッジに最適かもしれないと考え、まずはShureのV15VxMR MM型カートリッジに、Shureの販売終了したオリジナル針(それでもほぼ新品だが)の代わりにJICOの珍しいモリタの木製片持ち球形スタイラスを装着した。「ディテール低め/強いディストーションの広がり 」を完全に追求しようと考えたからだ。

私はアナログ・プロダクションからこの度発売されるSteely Danの『Katy Lied』のUHQR再販盤(dbxノイズリダクションシステム)の注釈を書かせてもらっていたので、このレコードは私がAP-01で最初に聴いたレコードのうちの1枚となった(告白:私は先行盤を手に入れたがプレスはUHQRではない180gの黒盤)。一方、私のリファレンスであるAudio Technica のAT MC-2022カートリッジ(Orbrayの一体型ダイヤモンドカンチレバー/スタイラスを備えたもの)を装着したOMA K3プロトタイプでも何度も再生したが、このカートリッジのダイナミックスラム(DS AudioのGrand Master Extreme光カートリッジにも採用)に対抗するのは難しいので、それを基準に比較したわけではない。

レコードの全ての溝に針が入る安定性と確実性はさておき、印象的ですぐに明らかになったことは、由紀精密/Shure/JICOの組み合わせの場合、中帯域の音色がニュートラルだったことだ。

私のリファレンスと比較すると、おそらくトランジェントの解像度が低いのではなく(不快になるほど柔らかいわけではないが)、音質的には中音域のすべての楽器、もしくはそのほとんどに相当する楽器の音色が無理なくきれいに、説得力を持って分離して聴こえる。Danの不気味で淫靡な曲の1つである 「Everyone’s Gone to the Movies 」ではマリンバ、サックス、フェンダーローズピアノ、そして3人のバック・シンガーが同じテリトリーで演奏しているが、どれも難なく上手く分離している。

Shureで再生したレコードリストは省略するが、球状のスタイラスにて失われるディテールが何であれ、聴く喜びを損なうことはなかった(いくつかの不快な録音ではむしろ有益)と結論づける。より重要なことは、LTEディストーションの増加が2次高調波歪みのように心地良い、ごく少量の添加剤として作用したことだ。私の耳は抗うことなくその心地よさに飛び込んだ。特にAP-01のリズミカルなグリップ感は、たるみの無い糸ベルトと、前述の高トルクを生み出すようにテンション管理されたプーリーの働きにより、アイドラーやダイレクトドライブに近いとさえ感じる。リズムの確かさ、しなやかな音色のバランス、2次高周波のキスの組み合わせは、私がShure V15VmxRで経験した中でも最も魅力的なパフォーマンスを生み出した(いつもは「尊敬するけど退屈」なのだ)。

このレビューの文脈ではShureは変数が多すぎて役に立たなかったので、次にAudio TechnicaのAT ART20を取り付けた。MC-2022は多くの点でより標準的なカンチレバー/ラインコンタクトスタイラスを備えている(Auris Bayaderer 1のビデオレビューでも使用)。低質量アームのように見えるが、8~12Hzの範囲内に垂直方向の共振周波数を生み出すには十分な高さだ。これで、私は本格的なリスニングに取り掛かった。

Masterline 7フォノプリアンプのレビュー(355号)では、BISからリリースされたLa Spagna(AN-1401)のAudio Nautes再発版を使用した。レビュー提出後、Discogsからオリジナルプレス(BIS LP 163-164)を注文した。AP-01を使って2つのプレス盤を聴き比べてみたが、すごい。Stan RickerはEQを主張しなかったので私は彼を信じているが、彼がどこかにボトムエンドを追加したか、オリジナルがそれをカットしたかのどちらかが行われている。なぜなら、オリジナル盤の方がはるかにオープンで透明感があり、高域のパーカッシブなトランジェントのアタックの正確さと残響が遥かに長いからだ。また、レコーディングスタジオを興奮させる小さなスパニッシュ・ドラムを含む1トラックのボトムエンドは、オリジナルの方が遥かに自然だ。再発盤では肥大化してしまっている。少額の投資をしてよかった。

この比較はAP-01の全体的なニュートラルさ、解像力、そして非常に低いノイズフロアを実証することとなった。二枚組LPの全曲を聴き通したとき、永松純氏が意図したであろうリスニングの快感がもたらされた。私をその空間に引き込んでくれたのだ。

このレビューを書き上げようとした時、Electric Recording Companyの宝物が届いた: RostropovichとBenjamin Brittenが演奏し、Gordon ParryとKenneth Wilkinsonがエンジニアを務めたシューベルトのアルペジオーネとピアノのためのソナタ/チェロとピアノのためのブリッジ・ソナタ(ERC 108)である。デッカSXL 6426の再発盤だ。ERCの再発盤の価格について文句を言う人がいるが、Discogsで最も安いオリジナルプレスはアイスランドからの発送で約$800、しかもVG+しかない。イギリスからのミント盤は約$1,000でジャケットには経年のシミがあるが、これに目を通さない人はいないだろう。現在完売しているERC(300枚限定)は約$500。漆黒の背景の中、RostropovichのチェロとBrittenのピアノは可聴域の歪みもなく再現されている。正確に描かれたピチカートの弾き、Rostyのチェロの魅惑的な光沢、そして余韻の残るワウのない残響が、心地良くあらゆる部分を揉みほぐしていく。

つまり、私が言いたいことは数値では表せないし、レコードの傷を取り除いても、アンダーハングであったとしても変わらないのだ。

AP-01を梱包してレビュー完了を宣言する前に、このターンテーブルの低音性能をチェックしなければならなかったので、何十年も再生していないオーディオマニアの名機を持ち出した。なぜMichael Murray Playing The Great Organ in the Methuen Memorial Music Hall(Telarc 5035 DD-2)を選んだかは聞かないでほしい。下は16Hzまで測定されるダイレクトカッティングだったが、再生してみた。AP-01の音はしっかりとふくよかでクリーン、低音まで完全にコントロールされていた。OMA K3/SAT CF1-12のアーム・コンボでも再生したところ、獣のように力強いスケール感と壁を揺らすような伸びの間には違いがあった。そう、大砲が放たれたかのようなのだ。

Conclusion
結論

この2階建てバスのようなターンテーブルはアナログキットの中で最もクールな物の一つであることは間違いない。場所を取らず、上部のプレートにはアクセサリーも置ける。造りの良さ、使いやすさ、楽しさは視覚的にも触覚的にも最高だ。精密加工のおかげで外周スタビライザーも使いやすい。

歪みが加わっているにもかかわらず、なぜこれほどまでの説得力があり、生命力あふれた音になるのか、アンダーハングのトーンアームに圧倒されていまだに解明できていないが、真空管がなぜ魅力的なのか(歪みが均等で、鈍い2~3%の轟音に抑えられている限り)、その理由と似たようなものであろう。Wally ToolsのJ.R. Boisclair氏は、LTEが追加されたにもかかわらず、エラストマーのストレスがないことがアームの音響性能の鍵であると推測している。アンダーハングを選択する設計者がいる理由が理解できた。

アームのシンプルさはセットアップと使用の両面で大きなプラスとなる。詳細はわからないが、音溝内での安定性(そしてサウンドステージングの結果)はアーム内のヒステリシスブレーキによるものに違いない。また、ある奇妙な挙動にも関係しているに違いない: AP-01が私のシステムに入っていた数ヶ月のうち、時々(5~6回ほど)アームが動かないことがあった。(※由紀精密追記:針飛びによる現象ですが、現在は改良により解決しています。)ほんの少し触ると動くのだが、それ以外はShureでは1g、Audio-Technicaでは2g、Ortofon Diamondでは2.6gの針圧で、まるでレールに乗ったかのようにトラッキングした。

また、バックグラウンドの異常なほどの静かさにも圧倒された。私は一流のターンテーブルの静かなバックグラウンドには慣れているつもりだが、AP-01の静粛性はトップ・オブ・トップだ。

由紀精密のAP-01を見て、触って、聴いてほしい。予算が$50,000まで増えるのであれば、特に自宅スペースが限られているのであれば検討する価値がある。2台目のターンテーブルにこれだけの金額を投じることができる人にとって、このターンテーブルは感謝したくなるような、新しくて特別な何かを与えてくれるだろう。

米国のオーディオ専門誌「The Absolute Sound」の2025年1月号にAP-01が掲載されました / The AP-01 was featured in the January 2025 issue of audio magazine The Absolute Sound. Read More »

1/17-20 鎌倉 祖餐にて、AP-01 をご試聴いただけます / 1/17-20 You can listen to the AP-01 at Restaurant Sosan in Kamakura, Japan.

開催日程
2025/1/17 (金) OPEN 17:30 / CLOSE 22:00
2025/1/18 (土) OPEN 11:00 / CLOSE 22:00
2025/1/19 (日) OPEN 11:00 / CLOSE 20:00

19日限定 SPECIAL EVENT
開発責任者 永松純氏による解説
「AP-01が魅せる音の世界」
一部 14:00~ 出入り自由
二部 16:00~ 出入り自由
三部 18:00~ 完全予約制

※三部18:00の回は完全予約制です。
※ワインとお食事のスペシャルセットをご用意しております。(1セット¥10,000)

ご予約の際は、粗餐までお電話にてご連絡ください。TEL 0467-37-8549

場所
鎌倉 祖餐

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小原由夫のアナログ歳時記 12月16日(日)

オーディオ評論家 小原由夫 による
今日の一曲と日常の記録
レコードと共に時を刻む

12月15日(日) 晴れ
 
 今年のハロウィーンは大きな騒ぎにならなくてよかった、よかった。渋谷のスクランブル交差点も、新宿歌舞伎町界隈も、事前アナウンスと自治体の自主規制のおかげもあって、ごく一部の若者とインバウンド外国人が多少やらかした程度に止まり、何より、何より。一体いつの頃から日本でハロウィーンを騒ぎ始めたのか。私が子供の頃の「昭和」には、ハロウィーンのハの字もなかったのに…。
 
 で世の中、師走の空気で一気にクリスマスに突入だ。こちらはハロウィーンと違ってすっかり定着しているし、もちろん昭和にだってありましたよ、ハイ。
 
 それでも「クリスマス・イルミネーション」とやらが近年の流行らしい。昭和の時代は、クリスマスツリーの電飾がせいぜいで、家屋に電球張り巡らせてキラキラピカピカやるなんてのはほぼ皆無。あれでブレーカー落ちないのか、個人的には心配になってしまう。まさか暖房器具の電気停めてまで震えて痩せ我慢なんてことはないと思うけど(経産省、今年は省エネのアピールしてないんだっけ、知らんけど)。
 ということで、私は今年も自宅でひっそりクリスマス・アルバムを聴くとしますか。そこで久々に引っ張り出したのが、人気アーティスト結集型チャリティーソングの元祖「Do They Know It’s Christmas?」である。ボブ・ゲルドフとミッジ・ユーロを中心に英国ポップ・アーティストが集結し、エチオピア飢餓救済のために12インチシングルを英ロンドンのサーム・ウェスト・スタジオにて1984年12月25日に録音した。集まりしは、ポール・ヤング、ボーイ・ジョージ、ジョージ・マイケル、デュラン・デュラン、スティング、ボーノ(U2)等、約50名の錚々たる面々。
 
 そのサウンドは、まさにゴージャス。各人が歌い継ぐソロの瑞々しくもクリアーなこと!ジョン・テイラー(デュラン・デュラン)のベースとフィル・コリンズのドラムが繰り出すビートも強力無比だ。
 電飾イルミに持っていかれる消費電力がどれほどオーディオ再生に影響を与えるかは知る由もないが、オーディオ機器にとって電源は力の源、重要である。
 
 ところでAP-01の電源制御基板は、自社内での新設計によるリニア電源。先代のAP-0ではACアダプターだったが(さすがに高級オーディオ機器でACアダプターは如何なものかと思ったが)、回転の安定性をさらに追求したという同回路が再生音に大きく影響していることは、さまざまなアナログプレーヤーを聴いてきた私が日々実感している。
 
 はてさて、今年のクリスマス、皆さんはどんなホリデー・ソングを聴いてお過ごしになるのだろう。くれぐれも電飾優先で、寒い思いなどされませんよう。
「2024年 私の漢字一文字 ”祝” 横浜DeNAベイスターズの26年ぶり日本一」
執筆者 プロフィール

小原 由夫
オーディオ評論家。測定器メーカーのエンジニア、編集者という経歴をバックボーンに、オーディオおよびオーディオビジュアル分野に転身。ユーザー本位の姿勢でありながら、切れ味の鋭い評論で人気が高い。
自宅には30帖の視聴室に200インチのスクリーンを設置。サラウンド再生を実践する一方で、7000枚以上のレコードを所持。

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2024/12/7 茅ヶ崎レコードカフェ Reco・retoライブイベント レポート公開

イベントレポートを公開しました。

YUKISEIMITSU AUDIO REPORT 第8回目は、以前にもお世話になった茅ヶ崎のレコードカフェ、Reco・retoさんで開催されたライブイベントに参加した模様をお送りします。

茅ヶ崎のレコードカフェ Reco・retoイベントレポート

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2024/12/7 茅ヶ崎レコードカフェ Reco・retoにてライブイベントに参加

YUKISEIMITSU AUDIO EVENT REPORT

年の瀬が近づき、師走らしい気候となってまいりました。皆様いかがお過ごしでしょうか?由紀精密の佐竹です。

YUKISEIMITSU AUDIO REPORT 第8回目は、以前にもお世話になった茅ヶ崎のレコードカフェ、Reco・retoさんで開催されたライブイベントに参加した模様をお送りします。

第5回のイベントレポートの最後でも触れましたが、今回のライブイベントはBread & Butterの岩沢二弓さんのソロライブでした。岩沢さんの演奏の前後や休憩時間にAP-01でレコードをかけ、製品や会社の紹介なども少しお話しさせて頂きました。ありがたいことに今回も多くのお客様にAP-01の音を聴いて頂き、製品そのものにもご興味を持って頂け、嬉しい限りでした。AP-01の知名度がジワジワと茅ヶ崎で高まりつつあるかもしれません。

ただ、今回の主役は岩沢さんで、私たちの役目はあくまでも演奏以外の時間を繋ぐBGMです。

開演前、AP-01のセッティングが終わったころに岩沢さんがマネージャーの方といらっしゃいました。ギターを一本担いだお姿のかっこよさ、朗らかな笑顔にすぐに心を掴まれてしまいました。リハーサルも拝見したのですが、数曲のうちに段々とボルテージを上げて調整されていらっしゃったようで、プロのアーティストのリハーサルに立ち会える機会などなかなか無い私にはとても新鮮な体験でした。

いざ本番が始まって印象的だったのは、歌声やギター、楽曲の素晴らしさも去ることながら、曲と曲の間の少しの時間であってもお客さんをグッと引き付けて離さないお話の面白さです。恐らくほとんどアドリブだったのでではないかと推察しますが、ちょっとしたイレギュラーもすぐに笑いに変えてしまう巧みさもあり、店内全体が楽しい空気に包まれていました。ご本人のお人柄あってのことなのでしょうが、1969年がデビューとのことなので、55年もの長きに渡って磨き続けられた演奏とトークはまさに燻し銀。私はスタッフ側に立っているにも関わらず釘付けになってしまいました。

そんな演奏とトークのおかげで、岩沢さんの昔からのファンの方々だけでなく、初めてのお客様まで含めて終始和やかなムードに包まれ、演奏後もお酒を飲みながら岩沢さんと語り合う時間を過ごしていらっしゃいました。

 

その後、岩沢さんが帰り支度を始めたのですが、不思議なことに、ギターがケースに仕舞われた瞬間、歌と語らいで盛り上がっていた空気もギターと一緒に仕舞われたかのように店内が静まったように感じました。

来た時と同じようにギターを担いで外に出られる姿を見て、ギター1本あればいつでもどこでも音楽を奏でられる身軽さ、自由さを纏っているように感じられました。

こんな素敵なライブのBGMをAP-01に任せて頂けたことは非常に光栄で、「今日も一日お疲れ様」と心の中で声をかけながらAP-01を箱の中に仕舞いました。

以上、茅ヶ崎レコードカフェ Reco・retoさんでのライブイベント参加レポートでした。
改めまして、ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました!

残念ながら今回ご来場の叶わなかった方々、「また聴きたいな」と思っていただいた方々、なんと、2025年2月2日(日)にReco・retoさんでのイベント第三弾「茅ヶ崎DEMO SESSION」が開催されます。
かつて日本のジャズ専門レーベルであるthree blind miceを立ち上げた藤井武さんと弊社社長 永松のトークセッション、AP-01を通したthree blind miceの音を楽しんでいただける機会です。ご興味のある方、是非ご参加ください。(詳細はこちら

その他のイベントスケジュールも決まり次第、ホームページやSNSでお知らせして参ります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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2/2 茅ヶ崎レコードカフェReco reto イベントにて、AP-01 をご試聴いただけます / You can listen to the AP-01 at the event held at Chigasaki Record Cafe Reco reto on February 2.

At Chigasaki Record Café Reco Reto, Yuki Precision, a company dedicated to craftsmanship, and “three blind mice,” known for their commitment to sound production, will be delivering plenty of TBM’s audio sources using the RECORD PLAYER “AP-01.”

Schedule
February 2, 2025 (Sunday)

Place
Chigasaki Record Cafe Reco.reto

Outline of the event
OPEN 14:30 / START 15:00
4,000 yen per person (one order only)

Reservations required
For reservations, please contact us by e-mail
recoreto8686@gmail.com

茅ヶ崎レコードカフェReco retoにて、ものづくり一筋の由紀精密と音作りにこだわった「three blind mice」がRECORD PLAYER「AP-01」でTBMの音源をたっぷりとお届けします。

開催日程
2025年2月2日 (日)

場所
 茅ヶ崎レコードカフェReco.reto

開催概要
OPEN 14:30/START 15:00
おひとり様 4,000円 (ワンオーダー制)

完全予約制
予約はメールにてご連絡ください。
recoreto8686@gmail.com

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2024/11/23-24 ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2024 イベント レポート公開

イベントレポートを公開しました。

YUKISEIMITSU AUDIO REPORT 第7回目は11/23(土)~11/24(日)に東京の浅草橋で開催されたPHILE WEB 25周年記念イベント、「ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2024」の模様をお送りします。

ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2024 イベント

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2024/11/23-24 ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2024 イベントレポート

YUKISEIMITSU AUDIO EVENT REPORT

街のあちこちからクリスマスソングが聞こえる季節になってきましたね。由紀精密の佐竹です。

YUKISEIMITSU AUDIO REPORT 第7回目は11/23(土)~11/24(日)に東京の浅草橋で開催されたPHILE WEB 25周年記念イベント、「ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2024」の模様をお送りします。

由紀精密が出展する都内のオーディオイベントとしては、OTOTEN以来です。関東近郊のお客様と触れ合う、貴重な機会となりました。

(現在秋葉原のダイナミックオーディオには展示していただいているので、ご来場できなかった方は是非そちらにお問い合わせください)

ちなみに、今回もOTOTEN同様に光城精工、サエクコマース、前園サウンドラボとの4社合同展示となり、4社の社長や社員同士の掛け合いも繰り広げられて和気あいあいとしたイベントでもありました。

1日半と比較的短い期間のイベントでしたが、多くのお客様にご来場いただけたことも印象的です。初日の11/23は12:00開場の予定でしたが、開場前からかなり多くのお客様が並ばれており驚きました。こういった風景を見るにつけ、イベントの熱気を形作るのはお客様によるところが大きいと感じます。熱意のあるお客様方のお陰で、今回のイベントも大変盛り上がりました。ありがとうございました。

2日目の11/24はデモ演奏の機会が各社2回ずつ(初日は1回のみ)ありましたが、初日の持ち時間(1時間)に比べて45分、30分と短いデモとなりました。が、短いが故にデモの内容、説明で時間を割くポイントが各社いつもとは異なり、違う角度から製品のご紹介が出来たこともなかなか無い機会かもしれません。

また、他の部屋の状況はあまりわかりませんが、私たちが出展した部屋ではアナログプレーヤーに興味をお持ちの方の割合が高かったように感じます。ありがたいことに、デモの時間が終わる度に多くの方がプレーヤーを囲んでくださいました。持参した製品カタログも初日の夕方前には全て無くなり、急遽翌日に追加したほどでした。

余談ですが、個人的に印象に残るのは初日の最後のデモ演奏です。OTOTEN同様、最後のデモ演奏の時間帯は4社合同での競演、テーマに沿ったレコードを各社が順番にかけるという内容です。今回のテーマが”ロック”だったこともあり、由紀精密は社長の永松ではなく、私がレコードを選んでかけることとなりました。

自分で選んだレコードを人前でかけるという初めての経験。やってみるとなかなか緊張するものですね。後になって「やっぱりあっちの曲にすれば良かったかな?」などなど色々と考えることもあり、良い学びとなりました。

[機材セッティング一覧]
Analog Player:AP-01(YUKI)
Analog Player:AP-01EM(YUKI)
Tone Arm:WE-709(SAEC)
Cartridge:XC-11(SAEC)
除振台:HIBIKI-65(GRESIM)
Phono EQ:E-2(SOULNOTE)
Pre AMP:TAD-C1000-S(TAD)
Stereo Power AMP:TAD-M1000(TAD)
SP:TAD-CE1TX-K(TAD)
CD Player:TAD-D1000TX(TAD)
AC Clean P.S.:Aray MKII SE (KOJO)

以上、音元出版主催、ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2024のイベントレポートでした。改めまして、ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました!

残念ながら今回はご来場の叶わなかった方々、「また聴きたい」と感じていただいた方々、由紀精密はこれからも日本各地(たまに海外にも)で試聴の機会を作っていきます。またの機会にお会い出来ることを楽しみにしております。

これからのイベントスケジュールも決まり次第、ホームページやSNSでお知らせして参ります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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