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米国のオーディオ専門誌「The Absolute Sound」の2025年1月号にAP-01が掲載されました / The AP-01 was featured in the January 2025 issue of audio magazine The Absolute Sound.

米国のオーディオ専門誌「The Absolute Sound」の2025年1月号にAP-01が掲載されました。
音楽ジャーナリストのマイケル・フレマー氏に高く評価いただきましたことを、大変光栄に思います。

これからも真摯にレコードプレーヤーと向き合い、さらなる製品の開発に努めてまいります。今後ともご期待ください。下部に要約をご用意しました。是非お読みください。

The Absolute Sound (TAS)
1973年創刊の世界的に有名なオーディオ専門誌。オーディオ機器のレビュー、音楽ソフトの紹介、業界ニュースなど、幅広い情報を提供し、オーディオ愛好家や専門家から高く評価されている。信頼できるガイドとして、多くの読者に支持されている。

著者 Michael Fremer
ハイエンドオーディオ業界で広く知られる音楽ジャーナリスト。これまでにStereophileやSound & Visionなどの様々な出版物に寄稿し、オーディオファイルコミュニティに大きな影響を与えた。アナログオーディオ機器とレコードの熱心な支持者としても知られている。
現在、Fremer氏はThe Tracking Angleの編集者、The Absolute Soundのシニアエディターを務め、世界中のオーディオファイルに影響力のある人物として知られている。

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Rules Are For Fules!
ルールは愚か者のためにある!

もしスタンリー・キューブリックに選ぶことが出来たなら、『時計じかけのオレンジ』に登場する華やかな Transcriptorsのターンテーブルよりも、このターンテーブルを選んだかもしれない。数年前、ハイエンドミュンヘンでユニークな外観をしたターンテーブル、AP-0(現在は完売)を初めて見たとき、私はそう思った。

後継機であるAP-01の外観はプラッターとトーンアームがあること以外は他のどのターンテーブルとも異なっている。そのデザインの背後にある考え方も同様に独創的だ。その外観は言葉で説明するまでもなく、画像をご覧いただければ十分だろう。

医療、航空、時計業界などに向けて高精度部品を製造する日本のメーカー、由紀精密はこう自問した。「私たちの技術を結集して、人々の心を豊かにする製品を作れないだろうか」。この考えを目標とし、伝統的なオーディオ製造の慣習には耳を傾けることなく、枠にとらわれない物作りを目指し、「ハイエンドブランドと認識されるためには一定の(高価な)価格の製品でスタートする必要がある」と、この会社のある人物が加工技術を活用し製造することにゴーサインを出した。

その人物とはまだ40代の由紀精密の社長、永松純である。社長就任以前は開発部長、技術開発事業部長を歴任し、趣味はもちろんオーディオとクラシック音楽。この明らかにユニークなターンテーブルのデザインを生み出したのも彼である。OMA(Oswalds Mill Audio)が発見したように、独自性は必ずしも商業的成功への道筋になるとは限らない。Jacob Heil­brunnがレビューしたK3は最も独創的な外観を持つターンテーブルの1つであり、その形状は派手さではなく機能の結果である。私はK3を「建設クレーンを載せたグッゲンハイム美術館」のようだと外観を賞賛したが、同社のオーナー/創設者は私のそのレビュー(他メディアで公開)に腹を立てた。K3がどれだけ売れたか、または売れなかったか知らないが、その理由は高額な費用でも、世界最高の音と性能を持つターンテーブルでは無いからでもない。その外観が金銭的余裕のあるレコード愛好家をも遠ざけたのだ。

AP-01のデザインに対する読者の反応は私には予測できない。しかし、市場の声に押され、由紀精密にとって初めてのターンテーブルであるAP-0は完売した。AP-01はその後継機である。電気系統を変更し、当初の設計で気がかりだった静電気対策も施したという。また、部品の60%を改良している。

2年前のハイエンドミュンヘンで純(永松)氏と話をしたことがあるが、このプロジェクトで最も興味深いことは、同社が初めて自ら考案し開発したコンシューマー向け製品だということだ。同社のビジネスは常に、他社のプロジェクトのために指定された部品やコンポーネントを注文通りに生産することであった。このプロジェクトの当初の目的は、同社の能力をアピールし、「チーム・スピリット」を構築できるような有用な製品を設計・製造することだったが、ターンテーブルのアイデアが浮上するまでその熱は冷めていた。レコードやターンテーブルには、それらを知らないデジタル愛好家たちを狂わせる魔力があるようだ。それが魔法の一部なのかもしれない!

プロジェクトの開発は、当時のCEOであった大坪正人氏に内緒で、若い 「CD世代 」のエンジニア・チームと一緒に始まった。彼らは純の自宅でレコードの音の素晴らしさに触れるまでターンテーブル・プロジェクトを 「理解 」していなかった。AP-01で数ヶ月を過ごした今、私はその外観と音響性能の両方に対する市場の評価に同意する。しかし、9インチで「アンダーハング」(マイナス15mm)、さらにオフセットなしのトーンアームは既知の幾何学的ルールをことごとく破っているので、まずそれを明確にしておく。

A Call to Arms
アームへの提言

ピボット式トーンアームにおけるLTE(横方向のトラッキングエラー)を最小化する最善策はほぼ100年前に「定説」となった。ラッカー盤に音溝を刻むカッターヘッドはラッカー盤を半径方向に移動する一方で、アームは円弧を描くため、針がレコード面を移動する際に生まれる偏差を解決しなければならない。

この問題に取り組んだ数学者は、LTEを最小化するには針が描く円弧が、ピボットからスピンドルまでの距離(アームの長さ)を決められた長さ分「オーバーハング」させる必要があるとした。この長さ(ピボットからスピンドルまでの距離に「オーバーハング」を加えた長さ)がアームの有効長である。アームが長ければ長いほどLTEは小さくなるが、アームが長いと別の問題が生じる。どのオーディオでもそうであるように(そして、人生の大半と同様に)、飲む毒は自ら選ぶものである。

幾何学的な研究を行った数学者(1938年のLöfgrenと1941年のBaerwald)に加え、Percy Wilsonというイギリスのオーディオ科学者/ジャーナリストが、ヘッドシェルのオフセット角、またはアームを「S」字型に曲げて作るというアイデアを考案したと言われている。どちらのアームタイプも今日まで様々な長さで生み出され、針を溝の接線に近づけることに一役買っている。

BaerwaldとLöfgrenのどちらの説でもLTEがゼロとなる「null」ポイントが2つ、レコード面に生じる(ポイント位置は異なる)。それらのポイントがどこに位置するか、もしくはレコード面にどれだけLTEが存在するかは幾何学で明らかにすることができる(他にはStevenson、さらに最近ではUNI-DINがクラシック音楽や、ラベルに近い位置でのカット(古いレコードのような)を施さないレコードに対して、有用な2つの代替案を提供している)。

では、なぜAP-01の設計者は「アンダーハング」でオフセット角のないトーンアームを選んだのだろうか。ピボット式トーンアームに働くもうひとつの力が「スケーティング 」である。これはアームがレコードの中心に向かって移動する際に内側に滑る力であり、アームが長ければ長いほどオーバーハングが少なくて済むため、アームのスケーティングは少なくなる。そう、単純に言えば「オーバーハングがスケーティングを引き起こす」のである。

AP-01に実装された各種のメカニズムは完璧ではないかもしれないが、スケーティングに対し効果的に補正する反力を生み出している。この反力が無いと針はレコードの溝の壁に乗ることとなり、レコードにも針にも音にも良くない。

日本を中心に広がる設計思想として、オーバーハングとオフセットはLTEを低下させるが、スケーティングがもたらす音への悪影響はLTEがもたらす影響よりも不快であり、スケーティング、特にトラッキングと音に対して重要なサスペンションに悪影響を与えるほど激しいスケーティング・サイドフォースをなくすことでより心地よい音を生み出せるという主張がある。しかし、AP-01のアンダーハングのゼロオフセットアームは、微小ではあるがスケーティングしている。AP-01のアームを溝の無いレコードの外周に置くとアームは内側に向かって滑り始め、レコードの中心付近で止まる。一方、ラベルの近くにアームを置くと、アームは外側に向かって滑り、外周付近で停止する。これらの動きは通常のスケーティングに比べるとゆったりとしており、これがアンダーハングアームを提唱するポイントである。AP-01のアームはストレスや横方向への力をかなり軽減することができている。

End of Lecture
講義終了

幾何学はさておき、航空宇宙や医療分野で実績のある企業であるが故にAP-01のアームは精密に作られているように見えるが、異国情緒漂う材料で加工されたチューブや、エラストマーで絶縁されたカウンターウェイト、明らかなアンチスケーティング機構などは無く、「ベーシック」にも見える。方位角はヘッドシェルで調整可能で、オフセットがないため針のすくい角に影響しない(良いことだ)。アームにはマグネットの力を利用した非接触ブレーキが組み込まれおり、これは工業製品に使われているヒステリシスブレーキを応用したものと同社のWebサイトに記載されている。この技術がトーンアームに応用されたのは初めてである。アームの高さは10mmの調整幅がありVTA/SRAに対応でき、アームそのものもしっかりとした感触で、セットアップも使い勝手も良い。

同社はメインアームを自分で選んだアームに変更したい人に向けてアームレスのAP-01EMをハイエンドミュンヘン2024で発表している。なお、AP-01、AP-01EMともにセカンドアームの取り付けが可能だ。

ターンテーブルは糸ドライブ式で、スプリングでテンション管理された2つのプーリーとケブラー繊維の糸、DCコアレスブラシレスモーター(エンコーダフィードバック)が使われ、12インチ、高さ3/4インチ、適度な重さ(ほぼ9ポンド)のアルミ製プラッターを33.33、45、78rpmで回転させる。プーリーは溝付きの金属製シリンダーである。

プラッターもアームと同様に異国情緒のある素材やサンドイッチ構造、真鍮シリンダーの埋め込み、エラストーマーダンピングなどを使用していない。しかし、プラッターは独自の製造工程を経て作られている。「何の工夫もないアルミ製プラッターに見えますが、その製造工程には面白い特徴があります。この削り出しプラッターは、当初は板材を輪切りにして製造されていました。しかし、板は横方向に押し出して製造されるためにアルミの組織が横方向に伸びてしまう。それを丸くカットするということは、プラッター内のアルミ繊維も横方向に走ったままとなります。AP-01の開発ではより正しい状態を追求したかったので大きな丸太のように押し出されたアルミ材を用意し、それを輪切りにして使用しています。こうすることで、繊維方向は回転に対して縦方向となります。このような工夫は由紀精密が素材加工を得意とする会社だからできることです。」と説明されている。

オプションとして、レコードの外周の反りを抑え、プラッターの有効質量を増やして慣性駆動を向上させるために見事に加工された外周スタビライザーを取り付けることもできる(「見事に」というのは、他の多くの製品とは異なり、正確にフィットして中心に押し付ける必要がないからだ)。プラッターは静電気を抑える導電性で、ターンテーブルシート無しで使えるように設計されている。また、比較的質量の大きいセンタースタビライザーも供給されている。

プラッターを支えるマグネットベアリングは永久磁石の磁気反発を利用したラジアル非接触タイプで、スピンドル先端の球のみが外部と接触し、ベアリングの周囲には一定の間隔が確保されるためベアリングノイズのない静かで持続的な回転運動を可能にしている。ベースからプラッターまで続く長いシリンダーは、ブッシュ内のスピンドルだけでなくそれ自体が回転する。この構造は機械的にも見た目にもユニークだ。同社の文献のどこかに「自立回転するコマ」のようだとも書かれていた。そして実際にプラッターを横方向に押してみると、プラッターに多少の「たわみ」が生じる。(この点を強調するため、ハイエンドミュンヘン2022で同社は精密加工されたコマを配布した)。そう、AP-01は見た目もデザインもユニークなのだ。そして、このターンテーブルの振動(打検)に対する絶縁レベルは、私が遭遇した中で最高レベルであったことも指摘しておこう。上部プレートを叩いてもスピーカーからは高周波ノイズがわずかに発生しただけで、それもすぐに消えた。AP-01について私が何を書いても、その精巧な機械加工と、優れた「組み立て技術と仕上がり」(大胆なデザイン以上にミュンヘンの群衆を引き付けた視覚的特徴の1つ)を十分に伝えることはできない。

Setup And Use
セットアップと使用方法

セットアップは素早く、比較的簡単だ。AP-01は基本的に組み立て済みで、プラッターをスピンドルにセットすればすぐに使える。コントロールボックスの左側には電源ジャックとオン/オフスイッチがあり、RCAジャックとアース端子は右後ろの柱に内蔵されている。脚を水平にし、ケブラー糸をプラッターとプーリーにかけ、カートリッジを装着すれば準備完了となる。

コントロール・パネル上部のロータリースイッチでプラッターを回転させ、隣のレバーで33 1/3、45、78rpmを選択する。各回転数に応じたピッチコントローラーでピッチを調整できるが、設定後に誤って触れてしまうと再設定にはストロボ・ディスクが必要になるので注意が必要だ。AP-02にはロック機能があればいいのだが!

スピードと言えば、ケブラー糸の結び目はスピードコントロールの妨げになるように思えるが、実際はそうではない。少なくとも、AP-01のようにスプリングでテンション管理されたダブルプーリー設計は、驚くほど強力なトルクを発生する。W&F RMS 0.02/ジッター0.094%など、シェイク&スピンの結果は極めて良好だった。

価格は外周スタビライザー、センタースタビライザー、カウンターウェイト、重量カートリッジ用カウンターウェイト込みで、AP-01EMは$44,975、AP-01は$49,975だ。(※由紀精密追記:2024年12月現在の米国価格です)

Max SLP (Surprising Listening Pleasure)
最上のSLP(驚きの聴き心地)

AP-01の比較的質量の低いアームは追従性の高いカートリッジに最適かもしれないと考え、まずはShureのV15VxMR MM型カートリッジに、Shureの販売終了したオリジナル針(それでもほぼ新品だが)の代わりにJICOの珍しいモリタの木製片持ち球形スタイラスを装着した。「ディテール低め/強いディストーションの広がり 」を完全に追求しようと考えたからだ。

私はアナログ・プロダクションからこの度発売されるSteely Danの『Katy Lied』のUHQR再販盤(dbxノイズリダクションシステム)の注釈を書かせてもらっていたので、このレコードは私がAP-01で最初に聴いたレコードのうちの1枚となった(告白:私は先行盤を手に入れたがプレスはUHQRではない180gの黒盤)。一方、私のリファレンスであるAudio Technica のAT MC-2022カートリッジ(Orbrayの一体型ダイヤモンドカンチレバー/スタイラスを備えたもの)を装着したOMA K3プロトタイプでも何度も再生したが、このカートリッジのダイナミックスラム(DS AudioのGrand Master Extreme光カートリッジにも採用)に対抗するのは難しいので、それを基準に比較したわけではない。

レコードの全ての溝に針が入る安定性と確実性はさておき、印象的ですぐに明らかになったことは、由紀精密/Shure/JICOの組み合わせの場合、中帯域の音色がニュートラルだったことだ。

私のリファレンスと比較すると、おそらくトランジェントの解像度が低いのではなく(不快になるほど柔らかいわけではないが)、音質的には中音域のすべての楽器、もしくはそのほとんどに相当する楽器の音色が無理なくきれいに、説得力を持って分離して聴こえる。Danの不気味で淫靡な曲の1つである 「Everyone’s Gone to the Movies 」ではマリンバ、サックス、フェンダーローズピアノ、そして3人のバック・シンガーが同じテリトリーで演奏しているが、どれも難なく上手く分離している。

Shureで再生したレコードリストは省略するが、球状のスタイラスにて失われるディテールが何であれ、聴く喜びを損なうことはなかった(いくつかの不快な録音ではむしろ有益)と結論づける。より重要なことは、LTEディストーションの増加が2次高調波歪みのように心地良い、ごく少量の添加剤として作用したことだ。私の耳は抗うことなくその心地よさに飛び込んだ。特にAP-01のリズミカルなグリップ感は、たるみの無い糸ベルトと、前述の高トルクを生み出すようにテンション管理されたプーリーの働きにより、アイドラーやダイレクトドライブに近いとさえ感じる。リズムの確かさ、しなやかな音色のバランス、2次高周波のキスの組み合わせは、私がShure V15VmxRで経験した中でも最も魅力的なパフォーマンスを生み出した(いつもは「尊敬するけど退屈」なのだ)。

このレビューの文脈ではShureは変数が多すぎて役に立たなかったので、次にAudio TechnicaのAT ART20を取り付けた。MC-2022は多くの点でより標準的なカンチレバー/ラインコンタクトスタイラスを備えている(Auris Bayaderer 1のビデオレビューでも使用)。低質量アームのように見えるが、8~12Hzの範囲内に垂直方向の共振周波数を生み出すには十分な高さだ。これで、私は本格的なリスニングに取り掛かった。

Masterline 7フォノプリアンプのレビュー(355号)では、BISからリリースされたLa Spagna(AN-1401)のAudio Nautes再発版を使用した。レビュー提出後、Discogsからオリジナルプレス(BIS LP 163-164)を注文した。AP-01を使って2つのプレス盤を聴き比べてみたが、すごい。Stan RickerはEQを主張しなかったので私は彼を信じているが、彼がどこかにボトムエンドを追加したか、オリジナルがそれをカットしたかのどちらかが行われている。なぜなら、オリジナル盤の方がはるかにオープンで透明感があり、高域のパーカッシブなトランジェントのアタックの正確さと残響が遥かに長いからだ。また、レコーディングスタジオを興奮させる小さなスパニッシュ・ドラムを含む1トラックのボトムエンドは、オリジナルの方が遥かに自然だ。再発盤では肥大化してしまっている。少額の投資をしてよかった。

この比較はAP-01の全体的なニュートラルさ、解像力、そして非常に低いノイズフロアを実証することとなった。二枚組LPの全曲を聴き通したとき、永松純氏が意図したであろうリスニングの快感がもたらされた。私をその空間に引き込んでくれたのだ。

このレビューを書き上げようとした時、Electric Recording Companyの宝物が届いた: RostropovichとBenjamin Brittenが演奏し、Gordon ParryとKenneth Wilkinsonがエンジニアを務めたシューベルトのアルペジオーネとピアノのためのソナタ/チェロとピアノのためのブリッジ・ソナタ(ERC 108)である。デッカSXL 6426の再発盤だ。ERCの再発盤の価格について文句を言う人がいるが、Discogsで最も安いオリジナルプレスはアイスランドからの発送で約$800、しかもVG+しかない。イギリスからのミント盤は約$1,000でジャケットには経年のシミがあるが、これに目を通さない人はいないだろう。現在完売しているERC(300枚限定)は約$500。漆黒の背景の中、RostropovichのチェロとBrittenのピアノは可聴域の歪みもなく再現されている。正確に描かれたピチカートの弾き、Rostyのチェロの魅惑的な光沢、そして余韻の残るワウのない残響が、心地良くあらゆる部分を揉みほぐしていく。

つまり、私が言いたいことは数値では表せないし、レコードの傷を取り除いても、アンダーハングであったとしても変わらないのだ。

AP-01を梱包してレビュー完了を宣言する前に、このターンテーブルの低音性能をチェックしなければならなかったので、何十年も再生していないオーディオマニアの名機を持ち出した。なぜMichael Murray Playing The Great Organ in the Methuen Memorial Music Hall(Telarc 5035 DD-2)を選んだかは聞かないでほしい。下は16Hzまで測定されるダイレクトカッティングだったが、再生してみた。AP-01の音はしっかりとふくよかでクリーン、低音まで完全にコントロールされていた。OMA K3/SAT CF1-12のアーム・コンボでも再生したところ、獣のように力強いスケール感と壁を揺らすような伸びの間には違いがあった。そう、大砲が放たれたかのようなのだ。

Conclusion
結論

この2階建てバスのようなターンテーブルはアナログキットの中で最もクールな物の一つであることは間違いない。場所を取らず、上部のプレートにはアクセサリーも置ける。造りの良さ、使いやすさ、楽しさは視覚的にも触覚的にも最高だ。精密加工のおかげで外周スタビライザーも使いやすい。

歪みが加わっているにもかかわらず、なぜこれほどまでの説得力があり、生命力あふれた音になるのか、アンダーハングのトーンアームに圧倒されていまだに解明できていないが、真空管がなぜ魅力的なのか(歪みが均等で、鈍い2~3%の轟音に抑えられている限り)、その理由と似たようなものであろう。Wally ToolsのJ.R. Boisclair氏は、LTEが追加されたにもかかわらず、エラストマーのストレスがないことがアームの音響性能の鍵であると推測している。アンダーハングを選択する設計者がいる理由が理解できた。

アームのシンプルさはセットアップと使用の両面で大きなプラスとなる。詳細はわからないが、音溝内での安定性(そしてサウンドステージングの結果)はアーム内のヒステリシスブレーキによるものに違いない。また、ある奇妙な挙動にも関係しているに違いない: AP-01が私のシステムに入っていた数ヶ月のうち、時々(5~6回ほど)アームが動かないことがあった。(※由紀精密追記:針飛びによる現象ですが、現在は改良により解決しています。)ほんの少し触ると動くのだが、それ以外はShureでは1g、Audio-Technicaでは2g、Ortofon Diamondでは2.6gの針圧で、まるでレールに乗ったかのようにトラッキングした。

また、バックグラウンドの異常なほどの静かさにも圧倒された。私は一流のターンテーブルの静かなバックグラウンドには慣れているつもりだが、AP-01の静粛性はトップ・オブ・トップだ。

由紀精密のAP-01を見て、触って、聴いてほしい。予算が$50,000まで増えるのであれば、特に自宅スペースが限られているのであれば検討する価値がある。2台目のターンテーブルにこれだけの金額を投じることができる人にとって、このターンテーブルは感謝したくなるような、新しくて特別な何かを与えてくれるだろう。