佐竹:そうでしたか。やはり濱田さんから見るとアームの部分が気になりますか?
濱田:いや、アームやカートリッジだけが音を変えるわけじゃなくて、音響理論から言うとプレイヤー全体が音を作っているんですよ。それをしっかり理解できれば良い物ができる。音響工学ですね。
私の場合だとね、兄貴分がそういった研究室に入ってずっと研究をやっていたのね。その人にカートリッジを渡して学校との付き合いを作って、材料とかから教えてもらったよ。
佐竹:濱田さんは元々音響学を勉強されていて、その後にアームのお仕事をされたんですか?
濱田:そうそう。まあ、私の場合はもっと前、小学校2年から五球スーパーラジオを作っていた。というのも、電気大を出た叔父が私と10歳しか違わない兄貴みたいなもんで、面白がって色々な物を作らせてくれたんです。中学の頃には真空管の物も色々と作れるようになった。その頃から楽器屋さんで修理の仕事をやりながら、無線機を作って電気の勉強もして、バイクのエンジンを分解して...そういう機械加工が好きだったんですね。
それと、父が美術の先生だったこともあって私も美術は出来た方だからデザインにそのまま活かされているんです。
佐竹:学ばれた分野が広いですね。
濱田:そう。だから私1人で5つぐらいの専門分野をやっているわけで、逆に言ったら5人いないと私の作りたい物が作れない。これではとてもじゃないけど生産性がないわけですよ。だから、そういうことも承知の上で私と付き合っていただければ「あいつ変わった男だけどいい所もあるな」となります(笑)。