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小原由夫のアナログ歳時記 10月12日(土)

オーディオ評論家 小原由夫 による
今日の一曲と日常の記録
レコードと共に時を刻む

10月12日(土)晴れ時々曇り

 後味の悪い夢を見た。朝起きてトイレに行くと、便器がない。夜半に目覚めてトイレに行った時には確かにあった。家内に尋ねると、子供たちを連れて出ていくと言いながら、件の便器を粛々と段ボール箱に詰めている。どうやら私が夫婦関係を裏切ったとかで、かなりご立腹の様子。だからといって便器を持って出ていくのは、いかがなものか。斯くして私はもよおしたまま、朝の近所を徘徊することになった。
 
 ここでハッと目が覚めた。夢とわかってホッと安堵したことはいうまでもない。家内は洗濯物を干している。子供たちはとっくに成人して巣立っている。何より安心したのは、然るべき場所に便器がきちんと鎮座していたこと。徘徊は夢の中だけでたくさんだ。
 
 神に誓ってこれは言っておくが、今朝の夢と現実がシンクロしているようなことは決してない。つまり、家内を裏切ったことはないと、ここにしっかり書き残しておく。
 
 とはいえ、夢とは実に不思議なもので、現実にシンクロしている夢を見ることもあれば、非現実的で突飛な夢を見ることもある。
 
 シンクロといえば、私のようなエンジニア上がりの人間は、某計測機メーカーがオシロスコープを『シンクロスコープ』という固有名詞で呼ばせていたことをご存じだろう。他方、音楽ファン、特にロックファンには、ポリスの「シンクロニシティー」が広く知られるところか。
 
 英国出身のロックバンド、ポリスは、レゲエを基礎としながらそれをパンク的手法で料理し、洗練されたポップスへと昇華させた。そのひとつの集大成が、彼らの5枚目のアルバムにして最高傑作の呼び声が高い83年作の「シンクロニシティー」である。
 
 そのLPで私が最も好きなのがA面6曲目、最内周の「Synchronicty II」だ。ニューウェイブの香りもちりばめたバンド後期の代表曲で、スチューワート・コープランドが繰り出す高速かつ変速的なビートに乗って、アンディ・サマーズの特徴的なギターリフが炸裂する。スティングのヴォーカルが実にカッコよくて堪りません!
 ここでAP-01のピュアストレートアームに備わったヒステリシス・ブレーキが最大の効能を発揮する。これはアームの根元部分に仕込まれたマグネットのN極とS極それぞれが強磁性体との相互作用によってアームの振動を遮断するもの。音溝に沿って針先だけが忠実に振動してほしいアナログ再生において理想的な再生環境を実現した、AP-01のオリジナル機構である。これがあるから「Synchronicty II」の疾走感がバッチリ決まるんだよなぁ。
 
 そういえば、ソロになってスティングが出した最初のアルバムは、「ブルー・タートルの夢」というタイトルだったっけ。亀になった夢でも見たんだろうか…。
 
「最近観たゴキゲンな夢:五輪卓球元代表の石川佳純ちゃんとお付き合いしている夢!」
執筆者 プロフィール

小原 由夫
オーディオ評論家。測定器メーカーのエンジニア、編集者という経歴をバックボーンに、オーディオおよびオーディオビジュアル分野に転身。ユーザー本位の姿勢でありながら、切れ味の鋭い評論で人気が高い。
自宅には30帖の視聴室に200インチのスクリーンを設置。サラウンド再生を実践する一方で、7000枚以上のレコードを所持。