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小原由夫のアナログ歳時記 7月21日(月)

オーディオ評論家 小原由夫 による
今日の一曲と日常の記録
レコードと共に時を刻む

6月23日(月・ 晴れ祝日「海の日」)
 
 2025年も半分が過ぎた。この上半期に訃報が届いた著名ミュージシャンは決して少なくない。元ザ・ビーチ・ボーイズの創設メンバーのブライアン・ウィルソン、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンのリーダー、スライ・ストーン、ソウルシンガーのロバータ・フラック、大ヒット曲「可愛いベイビー」で知られるコニー・フランシス、映画音楽家ラロ・シフリン、etc…。老衰や病気療養中 で帰らぬ人があった一方、予期せぬ事故など、死因はそれぞれさまざまだ。
 
 いわゆる人が“事切れる”瞬間とは、いったいどんな感じなのか、私はちょっと関心があるのだが、それは機械の電源が落ちる瞬間のようにパタッと止まるのか、それとも徐々に徐々にスローダウンしていくのか、人の機能停止に至るプロセスとはどういった経過を辿るのだろうか。

 人が生きていく上でエネルギーの源となるものはいろいろ考えられるが、私にとってはその内の何パーセントかが音楽鑑賞から抽出されている気がしてならない。できればその質は、ピュアでクリーンでありたい。だからこそオーディオのクォリティが重要なのだ。

 オーディオのエネルギーの源は、もちろん『電源』である。AP-01とて例外でなく、家庭用AC100Vの供給がなければ動かない。

 この電源供給に関して、先代AP-0ではACアダプター経由であったが、AP-01ではきっちり専用設計されたリニア電源が新たに内蔵された。プラッターの安定かつ正確な制御、ノイズ等の外的要因に影響されない高い性能を実現したもので、AP-0からAP-01への音質改善は、この電源回路の刷新に負うところも大きい。

 前述した物故ミュージシャンをリスペクトするべく、カバーソングを何か聴こうと思ってレコード棚から取り出したのが、元ヴァン・ヘイレンのヴォーカリスト、デイヴッド・リー・ロスが、ビーチ・ボーイズの「カリフォルニア・ガール」を歌っている12インチ・シングル盤だ。バンド全盛期の1985年にリリース(同年4月に脱退を表明)された全編カバー・アルバム「クレイジー・フロム・ザ・ヒート」のB面1曲目に収録されている。ザ・ビーチ・ボーイズのオリジナル・メンバーであるカール・ウィルソンがバックコーラスで参加したことも当時話題となった。
 
 野太い強烈なビートに乗って豪快に歌うデイヴィッド。元気いっぱいの彼の歌声を聴いていると、やっぱりエネルギーの源って大事だとつくづく思う。
「今年、失ったもの 仕事以上の付き合いだった編集人Tさん」
執筆者 プロフィール

小原 由夫
オーディオ評論家。測定器メーカーのエンジニア、編集者という経歴をバックボーンに、オーディオおよびオーディオビジュアル分野に転身。ユーザー本位の姿勢でありながら、切れ味の鋭い評論で人気が高い。
自宅には30帖の視聴室に200インチのスクリーンを設置。サラウンド再生を実践する一方で、7000枚以上のレコードを所持。

「アナログ歳時記」は今回を以って、ひとまず一区切りとなります。

1年間、ご覧いただきありがとうございました。
季節の移ろいとともに綴ってきたこの歳時記が、皆さまの日々に小さな彩りを添えることができていたなら、これ以上の喜びはありません。

そして、毎回心温まる文書をお寄せくださった小原先生には、心より感謝申し上げます。
先生の言葉が、季節の情景に深みと優しさを与えてくださいました。

これからも「日常の記録」が、皆さまの心のレコードに刻まれていくことを願っています。