2025年7月

小原由夫のアナログ歳時記 6月23日(月)

オーディオ評論家 小原由夫 による
今日の一曲と日常の記録
レコードと共に時を刻む

6月23日(月) 晴れ
 
 暑い、アヅイ、あじぃ。そんな3段活用で記したくもなる2025年初夏である。今年の夏もまた暑くなるのか、今からこんな陽気じゃ先が思いやられる。
 という一方では、あちこちでビアホールのオープンに心踊る2025年初夏である。涼しい屋内で嗜むのもいいが、陽が陰った夕刻に屋上ビアホールで飲む麦酒もまた、夏ならではの風物詩としてたいへん楽しみなのだ。
 そのまた一方で、夏に屋外でオーディオを楽しむのは辛いので、音楽は涼しい室内で聴くに限る。そこでビールなんぞは以ての外。いい気持ちでレコード鑑賞してたら、操作を誤ってレコード針をポッキリッ!  なんてのは洒落にならない。勉強代が高くつきましたでは目も当てられないわけで、ほろ酔い気分でオーディオに触れるのは、断じて避けねばならん。

 触れるといえば、AP-01。このターンテー ブルの軸受けが接触しているのは、シャフト最下端の1点のみ。モーターからの駆動力はケブラー糸を介してプラッターに伝達され、そこに独自の「マグネットベアリング」が相まって、永遠に回り続けるコマのごとき動作環境が構築されている。

「マグネットベアリング」は、上下2箇所に配されたドーナツ状の永久磁石で成り立っている。その反発作用により、シャフトはどこにも触れる事なく直立・水平を保っているわけだ。いやはや磁石の力、偉大なり。

『磁石、磁力』に因んだタイトルの手持ちアルバムは、米フュージョン・グループ「ステップス・アヘッド」の86年リリース、その名もズバリの「Magnetic」。今は亡きテナーサックス奏者マイケル・ブレッカーが、ビブラフォン奏者のマイク・マイニエリと組んだ双頭バンドで、本作がバンドの公式なラストアルバムだ。
 
 アルバムタイトルの由来は、B面1曲目に収録されているヴォーカル・ナンバー「Magnetic Love」から来たものと推察する。プログ ラミングされたドラムの強烈なビートが主導するファンク色の強い曲で、ゲスト・ヴォーカリストのダイアン・リーブスがパンチのある歌声を聞かせる。前述の「マグネットベアリング」による安定かつ静粛な回転運動に支えられ、その力強いリズムがまったく微動だにしないのが頼もしい。
 
 それにしても、果たして「Magnetic Love」とはどんな愛の形なのか未だわからず、私の心中は今も引き合い、反発している…。
「最近、磁力って凄いなと思ったこと
オーディオ機器の修理で着磁ドライバーを使っていた時、狭い隙間の作業でもビスが落ちずに捗ったこと」
執筆者 プロフィール

小原 由夫
オーディオ評論家。測定器メーカーのエンジニア、編集者という経歴をバックボーンに、オーディオおよびオーディオビジュアル分野に転身。ユーザー本位の姿勢でありながら、切れ味の鋭い評論で人気が高い。
自宅には30帖の視聴室に200インチのスクリーンを設置。サラウンド再生を実践する一方で、7000枚以上のレコードを所持。

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