YUKISEIMITSU AUDIO

2025/2/2 茅ヶ崎レコードカフェ Reco・reto「茅ヶ崎DEMO SESSION vol.1」試聴会レポート

YUKISEIMITSU AUDIO EVENT REPORT

ありがたいことに一月後半から立て続けにイベントがありましたのでレポートも連続していましたが、今回で一旦落ち着きます。由紀精密の佐竹です。

YUKISEIMITSU AUDIO REPORT の11回目は、これまでにも2度お世話になっている茅ヶ崎のレコードカフェ、Reco・retoさんです。今回は知る人ぞ知る「Three Blind Mice」(以下TBM)をかつて立ち上げられた藤井武さんとのデモセッションの模様をレポートします。

事の起こりは2024年10月6日、このレポートの第6回でもお伝えしたReco.retoさんでの初めてのイベントでした。そのイベントのコーディネーターの方からお声がけ頂き、今回のデモセッションとなりました。

まずはTBMについて触れなければなりません。日本のジャズを聴きこんできた方々にはお馴染みの伝説的レコードレーベルTBM。1970年に藤井さんが中心となって立ち上げ、「楽しいジャズ」「スイングするジャズ」「創造的なジャズ」「個性的なジャズ」を掲げ、数あるジャズレーベルの中でもかなり幅広いジャズカテゴリーを網羅、1983年までに約150作品をリリースされました。有名なベテラン奏者よりもむしろ、当時まだレコード発売の機会の少なかった若手のライブ実力者を積極的に起用し、日本のジャズ界の新風となりました。

ここ50数年の日本ジャズ界の礎を築き上げたお一人である藤井さんとのセッションということで私たちも楽しみにしていましたが、当日は東京や神奈川の沿岸部でも珍しく雪の予報。結局は雨で済みましたが、とても寒い冬の雨の日となりました。そんな天気の中でも駆けつけてくれた皆様には大変感謝しております。

普段のイベントであれば、尺の長い曲は途中でフェードアウトして説明に移行したりするのですが、今回はTBMのレコードが主役です。藤井さんセレクトの曲をしっかり聴いて頂くことを念頭に置き、10分以上ある曲も最後までじっくりと聴いていただける機会となりました。

また、TBM創設から語られる藤井さんのお話も興味深く、ジャズの音色とあわせて当時の日本の世相が時折目に浮かびます。よく永松が「レコードは録音当時の空間や時間を再現できるもの」といった趣旨のことを話すのですが、その言葉を思い出して合点がいきました。

藤井さんのお話は多岐に及び、参加者からの質問にもざっくばらんにお答えいただいたのですが、私の中で特に印象的だったお話を紹介させてください。

「『幸せとは何か』を話し合うために毎月、当時の友人の居た兵庫まで通い、辿り着いたのは『人間の志向状態への適応の認識』という結論。つまり、目標を掲げ、それに向かって努力し、目標に近づいている自分を客観的に認識できることこそが幸せということ。」

ジャズのお話を聞いていたはずが、いつの間にか幸福論のお話になっていました。そのこと自体も面白かったのですが、「なるほど」と思わされるお話でした。努力して目標に近づいていること自体が幸せなのではなく、目標に近づいている状態にある自分を客観的に認識することで幸せを感じ取ることができる、という意味だと思います。このことを50年ほど前に考えられたとのことですが、自己肯定感などが話題になる現代においても普遍的で、当てはまるお話なのではないかと思います。

楽しいイベントの時間は過ぎ、藤井さんをご自宅までお送りしました。その車中で藤井さんがお話されていたこともまた、藤井武という人物をとても物語っていると感じたのでご紹介します。

「お話があれば今後もイベントには出たいですが、ギャラはいらないですよ。ジャズを世の中に広めてジャズ界に貢献したいだけなので。」

以上、茅ヶ崎レコードカフェ Reco・retoさんでのイベントレポートでした。

改めまして、ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました!

残念ながら今回はご来場の叶わなかった方々、「また聴きたい」と感じていただいた方々、由紀精密はこれからも日本各地(たまに海外にも)で試聴の機会を作っていきます。またの機会にお会い出来ることを楽しみにしております。

その他のイベントスケジュールも決まり次第、ホームページやSNSでお知らせして参ります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。