Max SLP (Surprising Listening Pleasure)
最上のSLP(驚きの聴き心地)
AP-01の比較的質量の低いアームは追従性の高いカートリッジに最適かもしれないと考え、まずはShureのV15VxMR MM型カートリッジに、Shureの販売終了したオリジナル針(それでもほぼ新品だが)の代わりにJICOの珍しいモリタの木製片持ち球形スタイラスを装着した。「ディテール低め/強いディストーションの広がり 」を完全に追求しようと考えたからだ。
私はアナログ・プロダクションからこの度発売されるSteely Danの『Katy Lied』のUHQR再販盤(dbxノイズリダクションシステム)の注釈を書かせてもらっていたので、このレコードは私がAP-01で最初に聴いたレコードのうちの1枚となった(告白:私は先行盤を手に入れたがプレスはUHQRではない180gの黒盤)。一方、私のリファレンスであるAudio Technica のAT MC-2022カートリッジ(Orbrayの一体型ダイヤモンドカンチレバー/スタイラスを備えたもの)を装着したOMA K3プロトタイプでも何度も再生したが、このカートリッジのダイナミックスラム(DS AudioのGrand Master Extreme光カートリッジにも採用)に対抗するのは難しいので、それを基準に比較したわけではない。
レコードの全ての溝に針が入る安定性と確実性はさておき、印象的ですぐに明らかになったことは、由紀精密/Shure/JICOの組み合わせの場合、中帯域の音色がニュートラルだったことだ。
私のリファレンスと比較すると、おそらくトランジェントの解像度が低いのではなく(不快になるほど柔らかいわけではないが)、音質的には中音域のすべての楽器、もしくはそのほとんどに相当する楽器の音色が無理なくきれいに、説得力を持って分離して聴こえる。Danの不気味で淫靡な曲の1つである 「Everyone’s Gone to the Movies 」ではマリンバ、サックス、フェンダーローズピアノ、そして3人のバック・シンガーが同じテリトリーで演奏しているが、どれも難なく上手く分離している。
Shureで再生したレコードリストは省略するが、球状のスタイラスにて失われるディテールが何であれ、聴く喜びを損なうことはなかった(いくつかの不快な録音ではむしろ有益)と結論づける。より重要なことは、LTEディストーションの増加が2次高調波歪みのように心地良い、ごく少量の添加剤として作用したことだ。私の耳は抗うことなくその心地よさに飛び込んだ。特にAP-01のリズミカルなグリップ感は、たるみの無い糸ベルトと、前述の高トルクを生み出すようにテンション管理されたプーリーの働きにより、アイドラーやダイレクトドライブに近いとさえ感じる。リズムの確かさ、しなやかな音色のバランス、2次高周波のキスの組み合わせは、私がShure V15VmxRで経験した中でも最も魅力的なパフォーマンスを生み出した(いつもは「尊敬するけど退屈」なのだ)。
このレビューの文脈ではShureは変数が多すぎて役に立たなかったので、次にAudio TechnicaのAT ART20を取り付けた。MC-2022は多くの点でより標準的なカンチレバー/ラインコンタクトスタイラスを備えている(Auris Bayaderer 1のビデオレビューでも使用)。低質量アームのように見えるが、8~12Hzの範囲内に垂直方向の共振周波数を生み出すには十分な高さだ。これで、私は本格的なリスニングに取り掛かった。
Masterline 7フォノプリアンプのレビュー(355号)では、BISからリリースされたLa Spagna(AN-1401)のAudio Nautes再発版を使用した。レビュー提出後、Discogsからオリジナルプレス(BIS LP 163-164)を注文した。AP-01を使って2つのプレス盤を聴き比べてみたが、すごい。Stan RickerはEQを主張しなかったので私は彼を信じているが、彼がどこかにボトムエンドを追加したか、オリジナルがそれをカットしたかのどちらかが行われている。なぜなら、オリジナル盤の方がはるかにオープンで透明感があり、高域のパーカッシブなトランジェントのアタックの正確さと残響が遥かに長いからだ。また、レコーディングスタジオを興奮させる小さなスパニッシュ・ドラムを含む1トラックのボトムエンドは、オリジナルの方が遥かに自然だ。再発盤では肥大化してしまっている。少額の投資をしてよかった。
この比較はAP-01の全体的なニュートラルさ、解像力、そして非常に低いノイズフロアを実証することとなった。二枚組LPの全曲を聴き通したとき、永松純氏が意図したであろうリスニングの快感がもたらされた。私をその空間に引き込んでくれたのだ。
このレビューを書き上げようとした時、Electric Recording Companyの宝物が届いた: RostropovichとBenjamin Brittenが演奏し、Gordon ParryとKenneth Wilkinsonがエンジニアを務めたシューベルトのアルペジオーネとピアノのためのソナタ/チェロとピアノのためのブリッジ・ソナタ(ERC 108)である。デッカSXL 6426の再発盤だ。ERCの再発盤の価格について文句を言う人がいるが、Discogsで最も安いオリジナルプレスはアイスランドからの発送で約$800、しかもVG+しかない。イギリスからのミント盤は約$1,000でジャケットには経年のシミがあるが、これに目を通さない人はいないだろう。現在完売しているERC(300枚限定)は約$500。漆黒の背景の中、RostropovichのチェロとBrittenのピアノは可聴域の歪みもなく再現されている。正確に描かれたピチカートの弾き、Rostyのチェロの魅惑的な光沢、そして余韻の残るワウのない残響が、心地良くあらゆる部分を揉みほぐしていく。
つまり、私が言いたいことは数値では表せないし、レコードの傷を取り除いても、アンダーハングであったとしても変わらないのだ。
AP-01を梱包してレビュー完了を宣言する前に、このターンテーブルの低音性能をチェックしなければならなかったので、何十年も再生していないオーディオマニアの名機を持ち出した。なぜMichael Murray Playing The Great Organ in the Methuen Memorial Music Hall(Telarc 5035 DD-2)を選んだかは聞かないでほしい。下は16Hzまで測定されるダイレクトカッティングだったが、再生してみた。AP-01の音はしっかりとふくよかでクリーン、低音まで完全にコントロールされていた。OMA K3/SAT CF1-12のアーム・コンボでも再生したところ、獣のように力強いスケール感と壁を揺らすような伸びの間には違いがあった。そう、大砲が放たれたかのようなのだ。