OTOTENを6月に控え、今年もサエクコマース・光城精工・前園サウンドラボ・由紀精密の4社合同で出展をします。この4社合同という形式も今年で4年目。4社が仲良しなことも段々とお馴染みになってきているようです。
そこで、そんな4社の輪郭がこれまでより少しはっきりと見えてくるような読み物をお届けします。
OTOTENや試聴会ではあまり語られることのなかったパーソナルな部分や4社が集まった経緯、関係性、それぞれの設計思想。
OTOTENの前に読むと、当日の景色がこれまでとは少し違って見え、
OTOTENの後に読むと、「なるほど、こんな背景があったのか」と答え合せができるかもしれません。
第二回目は前園サウンドラボの前園社長と由紀精密の永松に加え、2社の最初の接点となった由紀精密の塚原も交えた回となっています。場所は前園サウンドラボの試聴室。前後編で語ります。
後編 トークテーマ
【前園サウンドラボと他3社との出会い】
・北澤さんは優しい、土岐さんは面白い
・ZonotoneとSAEC、それぞれの個性と目指すところ
・前園サウンドラボと由紀精密の出会い
・アクセサリー1つで音の方向性を決めうる個性
・Zonotoneの音はいかにして作られるか
【今年のOTOTENでは何を出品する?】
・新しいスピーカーケーブルと秘密の何か
・人前で話すことについて
・新しいスピーカーケーブルと秘密の何か
・人前で話すことについて
株式会社前園サウンドラボ 代表取締役社長 前園力 (WEB)
株式会社由紀精密 取締役社長 永松純
株式会社由紀精密 塚原太郎
インタビュアー:株式会社由紀精密 佐竹大祐
前園サウンドラボと他3社との出会い
北澤さんは優しい、土岐さんは面白い
佐竹:2つ目の質問です。4社合同の歴史については前回の対談で北澤さんに伺いましたが、北澤さんや土岐さんから「一緒にやろうよ」って誘われた時、前園さんはどう思ったんですか?
前園:何も抵抗はなかったですね。北澤さんとは以前から面識がありましたし。この業界に入った時にオーディオ評論家の福田先生からご紹介頂いたんですが、その時からすごくフレンドリーに接していただいてて。
佐竹:SAECさんとは同じジャンルの製品も扱うライバル企業とも言えますよね。それでも、一緒にイベントをやることに抵抗はなかったんですね。
前園:それは北澤さんが抵抗をなくしてくれた感じはありますね。北澤さんは本当に良い方で、確かに同じジャンルの製品はありますけど、すごく面倒見が良いと言うか、もちろん業界の先輩でもあるし「なんでも相談してください」みたいな感じで接してくださるんですよね。
で、土岐さんも別のイベントで初めてご一緒させていただいた時に「面白い人だな」と思ってたんです。それである時、土岐さんから「北澤さんって知ってる?今度、北澤さんと一緒にイベントやるんだけど、前園さんもどう?」って言っていただいたのがきっかけで前園サウンドラボもコラボに参加させてもらうようになりました。
ZonotoneとSAEC、それぞれの個性と目指すところ
佐竹:例えばケーブルなどの同ジャンルの製品については、イベントの時にSAECさんとの住み分けなどを考えられていたりするんですか?
前園:いや、そういうことはあまり考えていないですね。むしろ最初の頃は結構ガチンコでやってたんじゃなかったかな。お客さんにSAECさんのケーブルで聴いてもらった後に「では、今度はZonotoneで聴いてみましょう」なんて言いながらケーブルを差し替えて聴き比べてもらったりとか。
佐竹:今はそういうことはやらないですね。
前園:そうですね。メーカーごとにデモの時間が分かれてますからね。それと、SAECさんの製品とうちの製品では方向性が違うということもあります。
永松:そうですね。圧倒的に個性が違いますね。
前園:個性が違うからやりやすい、ということもありますね。でも、この間、北澤さんと話している時に「結構、目指している音の方向性は同じかもしれない」って話になりました。(笑)
SAECさんはどちらかと言うと本当に澄んだ音で伸びやかで、落ち着いて聴くことができる。清楚な感じと言うか。
うちはその真逆でドッカーン!じゃないですか。(笑)でも、ドッカーン!であっても、空間的な鳴り方をするドッカーン!にしたいんですよ。その二つは両極端なんですけどね。空間的な鳴り方、つまり広がりとか奥行を目指すと、どうしても薄い音になっていく、音が散らばっていっちゃう感じがあるんです。その音の散らばりを最小限に抑えて、力強く広がる音にしたいんですよ。
そんなことを北澤さんに話したら、「自分もそういう音を目指してるよ」みたいなことをおっしゃってて。(笑)
佐竹:究極的には目指している方向性は一緒だけどアプローチが違う、みたいなことですか?
前園:北澤さんも「やっぱり力強い音を出したい」って言ってましたし、そうですね。そこは確かにアプローチが違うだけかもしれないですよね。
前園サウンドラボと由紀精密の出会い
佐竹:話は変わりますが、前園さんがAP-0やAP-01の音を初めて聴いたのは、由紀精密がOTOTENに加わってからですか?
永松:そうですよね。初めて会ったのもOTOTENでしたっけ?
前園:いや、永松さんは…まだうちの試聴室が沼袋にあった頃に来ていただいたのが最初だったと思いますよ。
塚原:本当の意味での最初ってことで言うと、展示会で私が前園さんからお声がけをいただいたんです。オーディオ関係ではなくて、ものづくりや伝統工芸の展示会でした。
前園:そうですね!あれ、結構前ですよね。確か2020年だったかな。その展示会で由紀精密さんのブースを見つけて、塚原さんに「金属加工されてるんですね。自分はオーディオケーブルの会社の者なんです」って話しかけたら、「うちもオーディオやってるんですよ」っておっしゃられて、「えっ!?」って驚いたんですよ。申し訳ないことに、当時、自分はまだ由紀精密さんのことを存じ上げなくて。でも、既にanalog誌には掲載されていたんですよね。その節はすみません。
永松:いえいえ。我々もオーディオ業界に入って本当にすぐの頃でしたから。
前園:それで、その後も塚原さんと色々とやり取りをさせていただく中で、「ぜひ来てください」と当時の沼袋の試聴室にお誘いしたら、永松さんも来てくださったんですよね。
佐竹:そうだったんですね。その後、2022年からうちもOTOTENに一緒に出させて頂くことになると。
前園:そうそう、2022年が初めでしたよね。ちょうどこの試聴室を作ろうと決めたのと同じ年でした。その年のOTOTENで「もう1社お呼びしたい」って北澤さんと土岐さんと話してたんです。「どこの会社さんに出てもらおうか!?」って。それで北澤さんに「由紀精密さんはどうですか?」って提案したんじゃなかったかな。
佐竹:と言うことは、その時点ではまだAP-01の音は聴いていらっしゃらなかったにも関わらずご提案いただいたと…
前園:そうですね、まだ聴いてなかったです。
佐竹:いやー、よくぞそこでご提案いただいたというか…
永松:AP-01がひどい音だったら大変なことになってた。(笑)
前園:確かその年のOTOTENの直前、ミュンヘンのHigh Endでも由紀精密さんはうちのケーブルを使っていただいたんですよね?フォノケーブルでしたっけ?
永松:そうです。お貸りしました。初めてのHigh Endへの参加だったんですけど、あの青いケーブルはミュンヘンでも目立つので、お客さんが次々にケーブルを覗き込んでたのをよく覚えてます。
前園:そういうご縁もあって、「OTOTENも是非ご一緒にどうかな?」って思ったんだと思います。
アクセサリー1つで音の方向性を決めうる個性
佐竹:永松さんがZonotone製品の個性を表現するとしたらどんな感じになるんですか?
永松:自分から見ると、もう圧倒的な個性がありますよね、やっぱり。全てのオーディオ機器をアクセサリーで覆す可能性があるのはZonotone。(笑)音をある1つの方向性に引っ張る、引き寄せることができるようなすごい引力を持っていて、聴けば「Zonotoneだ!」って誰もがわかる。これは他のケーブルメーカーさんにはなかなかない特徴だと思います。
佐竹:そのあたりは前園さんとしても目指している所なんですか?
前園:そうですね。目指してると言うか、もうポリシーですよね。自分たちの中には無色透明っていう概念がないんですよ。結局、「無色透明ってなんだ!?」って議論になっちゃうんで。「素材にこだわってる」って言い方がありますけど、素材も1つ1つ脚色が違うんですよね。で、その素材同士をハイブリッドにすることで、それぞれの持ち味が出てくるんですが、配分量を変えるとそれぞれの個性がまた違う脚色で出て来る。そうなると結局、「無色透明ってどれ?どういう状態のこと?」っていう話になるんですよ。だから、Zonotoneが目指すところは、ケーブルはコンポーネントの一部であるという概念で、「Zonotoneらしい音を作ります」っていうことですかね。
いずれにしても、うちのケーブルは個性が強いって言われますけど、「確かにその通りだな」とは思います。
塚原:僕は自宅でZonotoneのケーブルを使ってるんですけど、もう、一聴してわかるんですよね。「これはもう戻れない」と。
永松:買った時に言ってましたよね。「すっごい変わりますよ」って。
Zonotoneの音はいかにして作られるか
永松:今日、ここの4350から出てきた音も凶暴な音でした。(笑)
前園:凶暴な音。(笑)
永松:噛みつかれそうな音だと感じたんですが、あれは多分、JBLや山水の音じゃないと思うんですよ。やっぱりZonotoneの音なんですよね。
前園:実はまさしくその通りで、この後ろにある4350を含んだシステムはリファレンス・システムだと思っていて、「これがZonotoneですよ」っていう音のベースとなるものなんです。後ろのシステムから出る音を参考にしながら、前にあるこの評価システムでケーブルなどの試作品や新製品の音出しをして追求しているんです。後ろのシステムと比べてどの程度Zonotoneらしさが出ているか評価するわけですね。この評価システムは決して最新鋭ではないですけど比較的新しいシステムで、そこから出る音と、後ろのシステムから出る音の間にどの程度の差分があるか、聴き比べて追い込んでいく感じですね。
今年のOTOTENでは何を出品する?
新しいスピーカーケーブルと秘密の何か
佐竹:最後の質問です。前園サウンドラボは今年のOTOTENには何を出されるのでしょうか?
前園:今、新しいスピーカーケーブルを作ってるんです。去年まではエントリーグレードのケーブルを扱ってたんですけど、今回はミドルグレードのケーブルです。もう開発は終わって量産に入っているんですけど、最近の中東情勢もあってちょっとどうなるかわからなくなってきちゃいました。一応、そろそろ最初のロットが出来上がってくるはずなんですが…販売を始められるタイミングが読めないですね。
佐竹:それでも今年のOTOTENでご紹介はされるということですか?
前園:その予定です。あと、今年のOTOTENではもう1つ目論見があって、とある製品のプロトタイプを参考出品してみたいなって思ってるんですよ。
永松:え、なんですか!?
前園:それはまだ秘密です。(笑)。
人前で話すことについて
永松:最後にお父様にまつわるお話でもう一つ伺いたいんですが、やっぱり伝説のイベントについてもよく語られますよね。試聴会で1曲もかけず、話通して終わるという。
前園:そうですね。(笑)
永松:最近、光城精工の土岐さんがそれをやったんですけど…
前園:え!?そうなんですか!?
永松:私はその時たまたま会場で見ていたんですが、1曲もかけませんでした。(笑)
でも、そのスタイルって元々はお父様がやられてたかと思うんですけど、お父様は常にそうされていたんですか?
前園:常に、とまではいかないですけど、とにかく話が長いんですよね。(笑)ただ、その話の内容が製品の専門的な話とかではなくて、レコードの歴史やカードリッジの蘊蓄なんかを面白おかしく話すんです。意図的に曲をかけないわけではなく、盛り上がっているうちに自然とそうなってしまったことが何度かあったということだと思います。それでお客さんも話に引き込まれて、終わってから「そういえば曲、聞いてないよね」と。
佐竹:本来は製品のプレゼンとか、ミッションがあったわけですよね?
前園:ミッションはあったはずですけど、多分、父にしてみるとそういうことではなく、さっきお話ししたような「いかにその会を楽しんでもらうか」ということだけでやってたんだと思うんですよね。「製品を買って欲しい」ということではなく。
佐竹:では、今年のOTOTENでは前園さんもぜひ、喋り倒しのスタイルを。(笑)
前園:いやいや。(笑)自分はそういうこと本当に苦手なんでいつも通りにやります。
今回は前園サウンドラボの前園社長にお話を伺いましたが、オーディオ業界の伝説のお一人、前園社長のお父様のお話も盛りだくさんでした。また、オーディオ業界とは別の場所で出会った前園サウンドラボと由紀精密が、今はオーディオ業界で共に歩んでいることにも不思議なご縁を感じます。
今後もこの4社、サエクコマース・光城精工・前園サウンドラボ・由紀精密での活動は続きます。今後とも、宜しくお願い致します。
次回は光城精工の土岐さんです!曲をかけずに喋り倒したという伝説の試聴会についても伺ってみたいと思います!お読みいただき、ありがとうございました。